2025年版:パート主婦が気にする「年収の壁」と賢い対策
- 日髙 岳

- 10月24日
- 読了時間: 7分
更新日:10月27日

パートで働く多くの方が気にしている“年収の壁”。なかでも有名なのは「103万円の壁」ですが、2025年現在、税制改正などによりこの壁の金額や仕組みが大きく変わっています。
今回は2025年版の「年収の壁」について最新情報をまとめ、壁を怖がらずに働くためのポイントをご紹介します。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)や生命保険の見直しを活用して、手取り収入を増やしつつ将来に備える賢い方法も解説します。
iDeCoで“壁”を賢く乗り越える
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、掛けた分だけ所得税・住民税の課税所得を減らすことができますideco-koushiki.jp。 例えば毎月1万円(年間12万円)の掛金を積み立てると、所得税率10%、住民税率10%のケースでは年間約2万4千円の税金が軽減されます(※所得税率5%の場合でも約1万8千円の節税効果)。 このようにiDeCoは老後資金を貯めながら税負担を減らせる一石二鳥の制度です。
〈iDeCo活用のメリット〉
課税所得を圧縮できる: 年間の課税所得を壁以下に抑えられれば所得税や住民税が非課税になり、仮に課税される場合でもその分税額を減らせます。例えば、パート収入が160万円を少し超えそうなときにiDeCo満額(年間27.6万円)掛金を拠出すれば、課税所得を160万円以下に抑えられ所得税がかからなくなります(住民税も軽減)
壁を気にせず勤務時間を延ばせる: 「もっと働きたいけれど税金が…」という場合でも、iDeCoを活用して手取り収入を減らさずに勤務時間を延長できます。本来なら税金で差し引かれる分を将来の自分の年金として積み立てられるので、会社もお客様も自分自身もハッピーになる方法と言えるでしょう。
2025年現在の「年収の壁」の整理
2025年時点で主な“年収の壁”とされるラインは以下のとおりです。
年収110万円(住民税の壁) – 年収が110万円を超えると住民税が発生します。(2024年までは100万円でしたが10万円引き上げられました) ただし110万円を超えた分に対して10%の住民税がかかる仕組みで、少し超える程度なら増税額はわずかです。
年収160万円(所得税(配偶者控除)の壁) – 給与所得控除と基礎控除の引き上げ、および低所得者向けの基礎控除特例により、給与収入が160万円以下なら所得税がかからない制度になりました。 2025年から「103万円の壁」が実質「160万円の壁」になったと報じられています配偶者特別控除も満額受けられる年収が150万円→160万円に拡大され、扶養者(夫)の税負担を気にせず配偶者(妻)が年収160万円まで働けるようになっています。 160万円を超えると配偶者特別控除額は段階的に減少し、被扶養者年収201.6万円超で控除ゼロになります。
年収106万円/130万円(社会保険の壁) – 社会保険上の扶養から外れるラインです。勤務先の規模や働き方によって適用ラインが異なり、週20時間以上勤務かつ一定条件を満たす場合は年収約106万円(月収8.8万円)から社会保険加入義務が生じます。 それ以外の場合は従来どおり年収130万円超で扶養から外れ、自分で健康保険・年金保険料を負担することになります。社会保険料は年収に対しおよそ15万~20万円台と税金より重いため、一度加入になると「手取りが増えないどころか減る」逆転現象が起こり得ます。この壁こそ多くのパート主婦が恐れているポイントでしょう。
※「106万円の壁」適用拡大の動き: もともと大企業(従業員501人以上)のパートに適用されていた106万円基準は、2024年10月から従業員51人以上の企業に拡大されました。
今後も段階的に企業規模要件は引き下げられ、最終的には2035年までに企業規模要件が撤廃される予定です。
また賃金要件(月8.8万円以上)も2025年6月から3年以内に撤廃される見込みで、全国どこでも最低賃金が上がり次第「収入に関係なく週20時間以上働けば社会保険加入」という形に変わっていきます。ただし労働時間週20時間未満であれば引き続き加入対象外なので、“106万円の壁”は形を変えて残るとも言われています。
社会保険の壁に注意!損しない働き方とは
税金の壁(110万・160万円)については、超えた部分に5~10%税金がかかるだけなので、少し収入が増えた程度で手取りが激減することはありません。
一方、社会保険の壁を超えてしまうと収入全体に対して厚生年金保険料・健康保険料が発生し、その負担額は年間15~20万円以上と大きいため、壁ギリギリで扶養を外れると手取りがかえって減ってしまうケースがあります。いわゆる「働き損」と呼ばれる状況です。
では、働き損にならないためにはどの程度稼げばよいか見てみましょう。一般的な試算では以下のようになります。
106万円の壁が適用される人(勤務先規模など条件満たす場合): 年収を124万円以上に増やせば働き損を解消できます。106万円から124万円に収入を伸ばすと増加分より社会保険料負担の方が小さくなり、結果的に手取りも壁以下のときより増えます。
130万円の壁が適用される人(上記条件に当てはまらない場合): 年収152万円以上に増やすことで社会保険料負担を上回る収入増が得られ、扶養内のときより手取りが多くなるとされています。逆に言えば、年収130万円台前半の範囲で止めると社会保険料負担の分だけ手取りが減りがちなので注意が必要です。
★ポイント: 税金だけ意識して「所得税5%だから大したことない」と思い油断していると、思わぬ社会保険料負担で手取り減少に陥る可能性があります。扶養内で働き続けるか、一歩踏み出して壁を超えるかは、ご家庭の状況や将来設計にもよりますが、もし壁を超えるなら上記の目安年収までしっかり稼いで「社会保険に入っても手取りアップ」を目指すことがベストです。
なお、政府も近年この「年収の壁」問題への対応策を進めています。2023年10月からは、一時的に年収が130万円を超えてしまった場合でも連続2年までは扶養のままでいられる措置がスタートしました(会社が「一時的な収入増」と証明すれば引き続き扶養認定される仕組み)。さらに2025年7月からは、年収130万円前後で社会保険加入となるパート従業員の手取りが減らないよう企業が給与アップ等の対応をした場合に1人当たり最大75万円の助成金を支給する制度も始まっています。政府としても「壁を気にせず働ける環境作り」を後押ししていますので、必要以上に萎縮せず前向きに働き方を検討してみてください。
年末調整のチャンス:保険料控除でさらにお得に!
毎年秋から年末にかけては、年末調整(所得控除)の季節です。これを機会に、生命保険の見直しもぜひ検討してみましょう。生命保険料も所得控除の対象となり、保険料を支払っていれば所得税・住民税の負担を軽減できます。特にここ数年で控除制度が改正され、現在は以下の3つの区分ごとに控除枠が用意されています。
一般生命保険料控除(死亡保険など)
個人年金保険料控除(個人年金保険)
介護医療保険料控除(医療保険・がん保険・就業不能保険・介護保険など)
それぞれの区分ごとに、所得税は最大4万円(旧契約は5万円)、住民税は最大2万8千円(旧契約は3万5千円)の控除が受けられます。
例えば年間7万円の個人年金保険料を支払った場合、新制度の控除額は約3万5千円となり課税所得がその分減少します。所得税率5%・住民税10%の方なら、約5千円の税金が軽減される計算です(所得税約1,750円+住民税約2,800円の減税)。
実際、年間12万円の個人年金保険料を支払うケースでは、所得税と住民税合わせて6,800円も税負担が軽減された例があります。塵も積もれば山となるで、控除による節税効果は決して侮れません。
★おすすめ: 中でも「介護保険」などの介護医療保険は、将来の医療・介護リスクに備えられるうえ控除枠も使えるため一石二鳥です。
最近は民間の介護保障保険の商品も充実していますので、必要に応じて介護保障を手厚くしつつ税制メリットを享受することも可能です。
既に生命保険に加入済みの方も、この機会に「死亡保険(残された家族の為の保険)」→「介護保険の充実(自分の為+被介護者となる家族の為」をキーワードに保障内容や保険料の見直しを検討してみましょう。
適切な保障を確保しながら保険料負担を調整すれば、家計の無駄を省きつつ控除もフル活用できます。
まとめ: 2025年の「年収の壁」は制度変更により様変わりし、税金面のハードルは大きく緩和されました。一方で社会保険の壁は依然として注意が必要ですが、国の支援策も始まりつつあります。ぜひiDeCoや生命保険料控除など賢い制度を活用しながら、壁を恐れずご自身にとってベストな働き方・備え方を考えてみてください。適切に対策すれば、「扶養の範囲内」にとらわれず収入アップと将来の安心を両立することも十分可能です。皆さんの働き方と暮らしがより充実したものになるよう応援しています! 詳しい説明を聞いてみたい方は、お気軽にお問い合わせください。








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